黒西野が「絵本×町」を重く捉えている理由

投稿日:2021.02.11 / 西野亮廣エンタメ研究所

※この記事の内容は外部に発信していただいて大丈夫です。


見出し画像おはようございます。

もう何年も前からJR大崎駅前に「いわし料理専門店」があるのですが、店の前を通る度に「いわし一本勝負でなんとかなるもんなんだな」と毎回唸っているキングコング西野です。

#今度行ってみよう

さて。

今日は『黒西野が「絵本×町」を重く捉えている理由』というテーマでお話ししたいと思います。

途中、「道徳的にどうなんだ?」という表現が出ていますが、話を分かりやすくする為に使わせていただきます。ご理解ください。

 

漫画と絵本の違いを整理してみよう!

『映画 えんとつ町のプペル』は、映画公開直前の試算では「興行収入10億円〜12億円がいいところ。それもコロナの影響が無かった場合で!」と出ていたのですが……あの手この手と仕掛け続け、ジワジワとクチコミが広がり続けて、まもなく、観客動員数【150万人】、興行収入【20億円】を突破しそうです。

応援してくださったお客様、映画館さんには、一生頭が上がりません。

好きです。

さて、その裏で地味に動いていた数字が「絵本の売り上げ」です。

映画公開前の絵本の帯には「50万部突破! 現代絵本の金字塔、ついに映画化!」と書かれていましたが、現在、絵本『えんとつ町のプペル』は【69万部】。

この2ヶ月で20万部ほど部数を伸ばしました。

個人的には、こっちの数字の方がヤベエと思っています。

いきなりですが、ここで、「漫画」と「絵本」の違いについて、ザックリとまとめてみます。

【漫画】

① ヒットした時のシェア率がハンパない。

② テレビ放送されて、さらにヒットする。

③ 読者と共に歳を重ねていく。

【絵本】

① あんまり売れない。

② テレビとかでも見かけない。

③ 「定番」になれば、新規ファンを獲得し続ける。

【漫画】も【絵本】も同じように「紙の上に絵と文章が印刷されたメディア」ではありますが、ビジネスモデルは大きく違います。

Voicy代表の緒方さん風に言うと、

【漫画】は既に魚がいるところに網を投げる「漁業型(一気にガッサー型)」のビジネスで、

【絵本】は土を耕して種を植えていく「農業型(チマチマ型)」のビジネスです。

僕が興味を持っているポイントは「10年後も新規ファンを獲得し続けているか、否か?」の一点です。

【漫画】は定番になればなるほど(連載が長期化すればするほど)新規ファンの参入コストが高くなり、連載が終了すれば、次の新作の大宣伝(テレビ放送)が始まり、販売面積が削られてしまいます。

一方、

「定番」になればなるほど強くなるのが【絵本】です。

どれだけ定番になろうが(何十年愛されようが)、読み切るまでに必要なコスト(時間&お金)は同じなので、お母さんは「定番絵本」を選びます。

ごらんなさい。

本屋さんの絵本コーナーでは、今日も、半世紀前に刊行された絵本が平積みされてるじゃありませんか。

#なんだその口調

以前もお話ししましたが、1967年に刊行された絵本『いないいないばあ』は、現在、発行部数700万部を突破。

恐ろしいことに、同作はこの4年で100万部を売っていて………刊行から半世紀経った今も売り上げのペースを伸ばしています。

#バケモノかよ

じゃあ、『いないいないばあ』を目指せばいいのか?というと、僕はそうは思いません。

ここからが今日の本題です。

 

僕らが作っている絵本は何の為の絵本なのか?

『いないいないばあ』がどれだけヒットしようが、

『ミュージカルいないいないばあ』は作られませんし、

『いないいないばあ光る絵本展』も作られませんし、

『いないいかいばあ美術館』も作られませんし、

『いないいないばあVR』も作られませんし、

『スナックいないいないばあ』はおそらく意味合いが変わってきます。

#化粧を8枚重ねてしている鬼キャラのママが働いているに違いない

僕らが作る絵本は「僕らが作るエンタメの玄関(チラシ)」です。

つまり、エンタメ化(2次展開、3次展開)できないと意味がない。

黒西野的に言うと、獲得した新規ファンを流す先が無きゃ新規ファンを獲得するメディア(=絵本)に手をつけた意味がないし、そもそも「新規ファンを流す先」が作れるように玄関(チラシ)を設計しておかないと意味がありません。

絵本『いないいないばあ』は、「仲見世や浅草寺を建てる土地が無い場所に『雷門』を作っちゃった」という状態です。

「たしかに、人は通ってくれるけど……で、何?」です。

その点、【漫画】は、(長い目で見て)期間限定とはいえ、エンタメ化(2次展開、3次展開)できるような設計になっています。

この、【絵本】と【漫画】の“ちょうど真ん中”を突くのが非常に重要だと僕は考えます。

目指すは「読みきるまでのコストを極限まで下げて、新規ファンは獲得し続けるけども、エンタメ化できるメディア」です。

……それは、どういったものなのか?

キャラクターの成長を描けば描くほど、面白味が増して、エンタメ化できる可能性も上がるのですが、連載が続けば、新規ファンの参加コストが高くなる。。

#今から全100巻の漫画を読むのは大変

一方で、

キャラクターの成長をメインの売り物にせず「1話完結モノ」にしたらしたで、新規ファンの参加コストは下がるが、エンタメ化する為のネタが不足する。。

そこで、

「キャラクター」ではなくて、「舞台」にスポットを当ててみることにしました。

『えんとつ町』です。

・ストーリーは一話完結。

・主人公を毎回変えて、第一話を読んでいなくても、第二話だけでも楽しめようにする。

#そもそも一話二話という概念じゃない

・ただし、舞台はいつも同じ『えんとつ町』。

そうすることで、キャラクターが獲得した新規ファンを『えんとつ町』に蓄積(※嫌な言い方ですみません!)することができます。

これまでは「キャラクター」を器にして、そこに蓄積させてしまっていたから、「前巻を読んでないから参加できない(=新規ファンの参加コストが上がる)」という問題が生まれてしまっていたわけで、そこをウンタラカンタラしちゃう。

#説明が急に雑になる男

今、『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』という絵本を作っています。

『えんとつ町』の地下で働くモンスター「マルコ」の物語です。

先々、「マルコは読んだけど、プペルは知らない」という子供達が出てきても、『えんとつ町』は知っています。

そして、イベント(お店)などは『えんとつ町』を前面に押し出す形で仕掛けます。

#天才万博なんてまさに

そうすれば、そこには「プペル」のファンも、「マルコ」のファンも集まります。

【絵本】という「新規ファンを獲得し続ける農業型ビジネス」をエンタメ化(2次展開、3次展開)できる形で押さえつつ、新規ファンがたまり続ける設計をしておくことが大切で、その答えの一つが『えんとつ町』という器です。

僕の寿命が尽きた後、次の世代の作家さんが「えんとつ町の○○」という絵本を描いてくれれば、この町は新規ファンを獲得しながら、ずっと回り続けるなぁと思ったりしています。

「聖地巡礼先の不動産を押さえた上で、新規ファンを獲得し続ける作品を作った方がいいよね」という話だったりします。

現場からは以上でーす。

【追伸】

サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino』を付けて《本垢》で呟いていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。

#11月8日の夜のスケジュールは空けておいて

https://nishino.thebase.in/items/28763178

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