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どこでも話せない(話したところでほとんど興味を持ってもらえない)ブロードウェイのナルホド話

2024.10.03 / 西野亮廣エンタメ研究所



おはようございます。
「好きなアメリカの料理は何ですか?」と質問され、「バナナ」と答えてしまったキングコング西野です。

さて。
今日は「どこでも話せない(話したところでほとんど興味を持ってもらえない)ブロードウェイのナルホド話」をお届けしたいと思います。
  
  

タレントの価値
  

今年だけで5回目となるニューヨーク生活が始まりました。
これだけ日本とアメリカを行ったり来たりしていると(しかも両方の国で同じタイトルのミュージカルを作っていると)、それぞれの国のクリエイティブの違いをまざまざと見せつけられます。

今日はその中でも、ミュージカルの「キャスティング」についてのお話しです。。

日本のミュージカルや映画には「俳優」ではなく「タレント」が起用されることがあります。

これには理由がありまして…

まず、単純に「この役は俳優よりも、このタレントの方が役に合っている」という至極シンプル&ドストレートな理由である場合があります。
「餅は餅屋」とはいえ、「肩書き」を飛び越えるケースは普通にあります。

それこそ『映画 えんとつ町のプペル』のブルーノ(父親)役は、どの声優さんよりも立川志の輔師匠の方が役に合っていた(というか、そもそも志の輔師匠に「あてがき」だった)ので、そこにマーケティング的な意図はなく、「シンプルに志の輔師匠の声が一番イイ!」という理由です。

あと、アニメーション監督さんの中には「声優さんの演技(声優声)」が苦手な監督さんが一定数いらっしゃるのも事実で、「声優さんではなくて、俳優さんをキャスティングしてください」という発注があったりします。
これはもう「好み」の問題なので仕方がない。

ただ、そういった真っ当な理由以外で、「タレント」が起用される場合があります。
「あの人、全然、よくないじゃん!演技下手じゃん!」となっちゃうような。

なぜ、「下手なタレント」がキャスティングされてしまうのか?

こちらは皆さんの想像通りマーケティング(集客の為)です。

ただ、この「集客」というのが少しだけ変則的で…たとえばキャパ(客席数)の小さな舞台であれば、シンプルに「タレントさんの集客力」におんぶに抱っこです。
そのタレントさんに800人のアクティブなファンがついていたら800席は埋まるから、黒字確定!」といった算盤の弾き方です。

ただ、これが映画となると話は別。

そのタレントに1万人のアクティブファンがついていて、1万人が動員できても、「観客動員数1万人」では映画の場合だと「爆死」扱いです。
では何故、そうまでして(作品のクオリティーを落としてまで)タレントを起用するのか?

実は、映画の場合は「作品のクオリティー」と引き換えに、「タレントの集客力」を取りに行っているわけではなくて、「タレントのメディア露出力」を取りに行っているんです。

「今話題のタレントを起用すると、ワイドショーで取り上げられるよね」といった感じで、タレントの「集客力」を買っているわけではなくて、そのタレントを起用した時に副産物としてついてくる「メディアの露出」を買っているわけですね。

「メディアで取り上げられたら、たくさんの人が観に来てくれるよね」という話で…まぁ、それも含めて「タレントの集客力」と言えるのかもしれませんが、キャパの小さい劇場の席を埋める時のタレント起用(ダイレクト集客)と、映画のような青天井のエンタメにお客さんを呼ぶ為のタレント起用(間接集客)は、微妙に性格が違います。

今話題のタレントのバリューは「メディアの露出力」で、そのタレントの所属事務所も「ウチのタレントを起用したら、ぶっちゃけ、広告効果もあるんだから、その分のギャラはくださいね」と足元を見るわけですね。

そのタレントを起用することでタダでテレビで宣伝してもらえるのだから(宣伝費が浮くのだから)、所属事務所の言い分は至極真っ当です。
  
  

ブロードウェイの場合
  

次にブロードウェイのキャスティングの話をさせていただきます。
こちらは「キャスト」というよりも、どちらかというと「クリエイター」のキャスティングの話です。

ブロードウェイではネームバリューのあるクリエイターが日本以上に重宝されます。
もちろん確かな実力があるからネームバリューが獲得できるわけなので、「ネームバリューのあるクリエイターを起用できれば、作品のクオリティーが上がる」というのはあります。

ただ、日本のタレントに「メディア露出力」という付加価値がついているように、ネームバリューのクリエイターにも付加価値がついています。

サロンメンバーの皆様なら薄らお気づきかもしれませんが、「ネームバリューのあるクリエイターをチームに迎えることができれば、投資家が集めやすくなる」んです。

ネームバリューのあるクリエイターさんのギャランティーがはね上がる理由は、そこ(その人を採用することで投資家が集まるから、結果的に採用コストは安い)にあって、これは「投資家のお金」で作られるブロードウェイ作品ならでは。

そして、話はここから。

ネームバリューのあるクリエイターがチームに入ると作品のクオリティーが上がるだけでなく、投資家が集めやすくなるわけですが、そのことは【ネームバリューのあるクリエイターをチームに紹介した人】も知っているわけですね。

本人はわざわざ口にはしませんが、「僕が彼を紹介したおかげで、あなたのチームの作品のクオリティーは上がって、あなたのチームはお金を集めやすくなった(数億円のお金を引っ張れる権利を得た)よね?」という思いがあったりなかったり。。
#大体あります

この時、チームは「ネームバリューのあるクリエイターをチームに紹介した人」へのリターンを求められます。
場合によっては、「共同プロデューサー」という肩書きを求められたりします。

それぐらい、「ネームバリューのあるクリエイターの紹介」は、ブロードウェイでは大きな価値を持つわけですね。

ただ、おいそれと「オッケー!素敵なクリエイターを紹介してくれたから、あなた、プロデューサーね」とプロデューサーの権限を渡してしまうと、チームの空中分解は必至。

というわけで、チームには「ネームバリューのあるクリエイターをチームに紹介した人」に対して、「プロデューサーの権限を渡す」以外の落とし所を探し、そこに向けて丁寧に交渉することが求められます。

ブロードウェイは「村」なので、このあたりのケアを雑にやってしまうと、噂がまわって、一気に旗色が悪くなってしまいます。
「紹介してくれてありがとう。じゃ、またね~」とはいかないんです。

こういった「交渉」もひっくるめてブロードウェイ戦で、日本人の先輩がいない中、今日も手探りで頑張っています。

こんな生々しい話をこれからも産地直送でお届けします。
現場からは以上です。

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