おはようございます。
昨日、とあるお仕事で「肛門」を差し出したキングコング西野です。
#ゴッドタン以外では初
#ヒントは東野さん
https://youtu.be/qOJPi5Ad50g
さて。
今日は巷で議論されている『映画 えんとつ町のプペルがヒットした理由』について、作り手本人目線からの分析・意見をココで共有したいと思います。
参考になるところがあれば、参考にしてみてください。
勿論、今回の話は「私が提供しているサービスの参考にはならないな」という方もいらっしゃると思うので、「なるほどな。へー!」ぐらいの感じで読み進めていただけると嬉しいです。
「ヒットした理由」なんて結果論。だけど…
『映画 えんとつ町のプペル』の現時点での(おおよその)興行成績は、「観客動員数130万人」「興行収入18億円」といったところ。
僕個人の満足ウンヌンカンヌンの問題は横に置いておいて、冷静にこの成績を見て、「ヒットしていない」と言うのは無理があります。
初週の数字を見たアンチの方々からは「コケましたねww」「爆死ww」と言われたのですが、さすがに最近は言われなくなりました。
ちなみに個人的には、「認知度のワリに初週の数字は大健闘している」と思っていました。
映画公開前にサロン内でもお伝えしていたとおり、「認知度の低いプペルは公開2~3週目が勝負」という意識でいました。
#意識妥当系
皆さまの応援と、作品が持つ馬力のおかげで、2~3週目からジワジワと頭角(=日数が経っても動員数が落ちない)を見せはじめ、気がつけば、まもなく興行収入20億円。
メディアでは「大ヒット」と紹介されることも少なくありません。
なので、ここでは「大ヒット」を前提に話していきたいのですが……本題に入る前に共有しておきたいことがあります。
僕は、「ヒットした理由」はどこまでいっても結果論であって、再現性100%のものではないと考えています。
「○○だからヒットした」はいくらでも言えるのですが、その方法をなぞったところで爆死するプロジェクトなど山ほどあります。
ただ、その分析にまったく意味がないか?というと、やはりそんなことはありません。
仮説は100%でないことは事実ですが、0%でないことも事実です。
作り手(サービス提供者)が仮説を否定してしまうと、毎度「あてずっぽう」のプロジェクトになってしまい、前には進めません。
参考にするかしないかは個人の自由ですが、飲み込めるデータは飲み込んでおいた方がいいなぁというのが僕の考えです。
その上で話を進めますね。
絵本原作の“ほぼオリジナル作品”は、何故ヒットしたのか?
言うまでもなく「Studio4℃の技術&執念」が一番最初に挙げられると思います。
そして、それに寄り添った各チームの仕事。
シンプルに「作品のクオリティー」です。
現在、世界40の配給会社からオファーをいただいておりますが(※公開時期はコロナと相談だけども!)、海外の評価に関しては「作品のクオリティーの評価」しかありません。
もちろん「西野亮廣の背景」などカウントされておりません。
一緒に走らせてもらったので多少贔屓目もあるとは思うのですが、もろもろ差っ引いても、そこは圧倒的だなぁと思います。
「ヒットさせる為には、SEO対策(※検索結果で自社サイトを多く露出をするために行う対策)に励む前に、そもそも、コンテンツの質を世界レベルに上げておくことが大切だよね」というのが一つ目の結論です。
身も蓋もない結論ですが、ここは、そういう世界です。
次に、もう少しだけ「集客」寄りの話をしたいと思います。
『映画 えんとつ町のプペル』は他の作品に比べて、リピート率が圧倒的に高いらしいです。
#すっごい高いんだってさ
ここには「副音声」などの施策(特典)も関係してきているとは思うのですが、副音声を二度も三度も聴くとは考え難い。
にも関わらず「10回観た!」という方も少なくともありません。
#好きです
これについて「ファンが熱狂的」という切り口(見方)もありますが、熱狂度でいうと『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『エヴァンゲリオン』の方が高い印象を受けます。
もっとも、ここに関しては正確には数値化できない部分で感覚値でしかないのですが、「熱狂的なファンが何回も通ったからヒットした」という結論はチョット雑だなぁと思っています。
それならば、これまでも「熱狂的なファンを抱える作品」からのヒット作は、もっと生まれていたハズなので。
エンタメビジネスを生業にする以上は、もう少し解像度の高い結論(仮説)を出さねばなりません。
結論を言っちゃうと、僕は『映画 えんとつ町のプペル』がヒットした理由の一つに、「全員がオチを知っていたから」があると思っています。
「星があるorない」の議論をしているのは、映画の登場人物(えんとつ町の住人)だけで、映画館に来られるお客さんは全員、星があることを知っています。
つまり、皆が皆、「えんとつ町の煙の上には輝く星がありました」オチから逆算して、物語を追いかけている。
ときどき、「途中で、話の展開が読めました」という感想をいただくのですが、「そりゃそうだよ」と思っています。
よく僕は「リピーターを生みたければ『サプライズ』を排除しろ」、もしくは「サプライズを集客装置のメインにするな」と言っているのですが、
#サロンでもよく言っている
今回がまさにそれで、「オチはどうなるの?」を集客装置にしていたら、リピーターはここまで生まれなかったでしょう。
「同じナゾナゾ問題に二度挑戦する人」がいないような感じです。
今作の最大の集客装置は「ストーリーのオチ」などではなく、「頑張れ」というメッセージで、それは今、世界中が求めている言葉です。
こんなに何度も何度もめげさせる世界を経験したのは僕らは初めてで、リピーターの方は、背中を押してもらいに映画館に通われているのだと思います。
「コロナ禍でよくヒットしたな」と言われますが、「コロナ禍だからヒットした」とも考えられます。
ミュージカル『Poupelle of Chimney Town』は、こっち(メッセージ推し)の方向で作った方がいいんだろうなぁと思っております。
そして、これから……
「皆がオチを知っていたらからリピーターが生まれ、ヒットに繋がった」という仮説は大切にしておいた方がいいと思います。
というのも、『映画 えんとつ町のプペル』の次回作はオチが読めません。
「最後はどうなるの?」が集客装置になっています。
つまり、今作ほどリピーターが生まれないことが予想されます。
それは全然良くて(※まったく問題ない!)……
大切なのは、「【リピーターが生まれにくい作品】という前提で、届け方を設計していくこと」だと思います。
ここの交通整理ができていないお仕事を時々見かけます。
小劇団の芝居でも、『衝撃のラストを見逃すな!』を売りにしているのに、通しチケットを売っている場合がある。
#チグハグですよ
『映画 えんとつ町のプペル』は、初戦は「何度も来ていただく」でヒットに繋げ、どうにかこうにか作品の認知を獲得しましたが、次は同じ手は使いません。
「認知を獲得した作品の戦い方」を選びます。
……とまぁ、こんな感じで、結果論とはいえ、ヒットした分析(ヒットした後に仮説を立てること)は、どの仕事に就いていようが、ある程度必要なんだろうなぁと思います。
今後の挑戦でも、こんなことをサロンメンバーの皆様に細かく共有していきます。
現場からは以上でーす。
【追伸】
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