編集して
《第2稿》です。
可能なかぎり、575調にしたいです。
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『しるし書店』(※もっとキャッチーなタイトルを付けたい!)
①
クマハチは、ほんやさん。
あさ は たうえのおてつだい。
ひる は おばあの にもつ もち。
いつも みんなのおてつだい。
じぶんのことは あとまわし。
(お婆さんの荷物を持っているクマハチ)
②
おかげで おみせは、かんこどり。
きょうも おきゃくが おりません……
(『熊八書店』肩肘をつくクマハチ)
③
ところがどっこい クマハチは、
おきゃくがいないということを、すっかりわすれて どくしょにむちゅう。
(本棚から一冊の本を取り出すクマハチ)
④
すきなページに おりめ をつけて、
だいじなぶぶん に せん をひき、
きづいたことを メモメモメモ。
(ペンを片手に本を読むクマハチ)
⑤
ほんは、すっかり『しるし』だらけ。
これでは おきゃく に うれません。
ところがどっこいクマハチは、「ガハハハ。これじゃあ、売れねえや」
(気づけば「しるし」だらけになった本を片手に、笑うクマハチ)
⑥
あるとき、1人の おんなのこ がやってきました。
おんなのこ はレジに置いてある 一冊の本に手を伸ばします。
クマハチが うっかり『しるし』を入れてしまった本です。
(しるし本を手に取る少女)
⑦
「その本は『しるし』を入れちゃって、売り物にならなくなったんだ。ガハハハ。」
おんなのこ は いいました。
「どうして? この本、とっても面白いわ」
(しるし本を読み進める少女。困惑するクマハチ)
⑧
「この ほん をよめば、おじさん がおもしろがっていることがわかる。これは せかいにひとつだけの ほん よ」
おんなのこは「『しるし』が入っているから面白い」と言いました。
(しるし本の良さを熱弁する少女)
⑨
「ガハハ。もともと売り物にならねえ本だ。持ってってくれ」
さすがに、タダで受け取るわけにもいかず、おんなのこ は自分がとても大切にしていた犬のヌイグルミを、クマハチにプレゼントしました。
(犬のヌイグルミを受け取るクマハチ)
⑩
次の日、評判を聞きつけた町の人達が、店に押し寄せました。
「しるし本をくださいな」
皆、他人の為に生きるクマハチが、普段、何を考えているのか、気になっていたのです。
(店の前に大行列)
⑪
クマハチが読んで、クマハチが「しるし」を入れた本だけを置く、クマハチの本屋は連日大盛況。
「はやく『しるし本』を作って」と皆がクマハチを急かします。
大好きな読書が仕事になるなんて思いもよらず、クマハチはとても幸せな毎日を送りました。
(大盛況の本屋。しるし本を作っているクマハチ)
⑫
あるひ のんきな ひるさがり
ポンチョがてつだい していると
ちゅうざいさん が かけてきて
こえ も からがら さけびます
ポンチョの ほんや が もえてるぞ
(荷物持ちのお手伝いをしているクマハチのもとに、駐在さんが走ってきて、叫ぶ)
⑬
店は激しく燃えていました。
何年もかけて集めた大好きな本は、あのゴウゴウと燃える炎の中。
火の勢いはどんどん強くなっていきます。その時でした。
(町の人達が消化活動にあたるが、勢いよく燃え上がる『熊八書店』)
⑭
「オイラの宝物を助けないと!」
なんとクマハチは、燃え上がる店内に飛び込んでいったのです。
(炎の中に飛び込んでいくクマハチ)
⑮
火の勢いは強く、誰も店に近づけません。
町の人たちは、ただただクマハチの無事を祈るばかりです。
(火の勢いを前に、何もできない町の人達)
⑯
まもなく、燃えさかる店からクマハチが出てきました。
服は焦げ、身体中に火傷をおったクマハチ。
そのクマハチが、炎の中から命懸けで持ち出してきたものを見て、町の人たちは驚きました。
(炎の中から、命からがら飛び出してくるクマハチ)
⑰
犬のヌイグルミでした。
何十年も守り続けてきた店や、大好きな本が燃えてしまったというのに、クマハチは おんなのこ から貰った犬のヌイグルミを町の人達に自慢気に見せて、「助かったぜぇ。ガハハハ」と笑います。
(犬のヌイグルミを持って笑うクマハチ。唖然とする町の人達)
⑱
次の日、おんなのこ がやってきました。
おんなのこ は、自分の家から持ってきた古本をクマハチに渡しました。
「ここにクマハチの『しるし』を入れて、店で売ってちょうだい」
(焼け跡に佇むクマハチに、古本を渡す少女)
⑲
そして、町の人達が次々とやってきました。皆、自分の家にあった古本をクマハチに渡します。
「子供の頃に読んだ本なんだ。ここにクマハチの『しるし』を入れてくれよ」
「この小説をクマハチはどう読むかなあ。『しるし』を入れてとくれ。また買いに来るよ」
(古本を持った人々が焼け跡に集まる)
20
気がつけば、たくさんの古本が集まっていました。
「この古本にクマハチの『しるし』を入れとくれ」
誰よりも町の人達を愛したクマハチは、誰よりも町の人達から愛されていたのです。
(焼け跡にたくさんの本が集まる)
21
まちの みな から もらった ほん の
すてきなページに おりめ をつけて、
だいじなぶぶんに せん をひき、
きづいたことを メモメモメモ。
そうして、町の人たちは、クマハチの『しるし』が入った せかいにひとつだけのほん をもとめて、また やってきたのでした。
(しるしを入れるクマハチ)
22
(『しるし書店』という看板が出ている。賑わっている)