If it ain’t broke, don’t fix it.

投稿日:2022.06.20 / 西野亮廣エンタメ研究所

※この記事の内容は外部に発信していただいて大丈夫です。



 

おはようございます。
時差のせいで投稿時間が完全にバグっているキングコング西野です。
  
さて。
今日は、せっかくアメリカにいるので『If it ain’t broke, don’t fix it.』という英語タイトルでお話ししたいと思います。
 
 

今回の挑戦のダメだった点
 

ミュージカル『えんとつ町のプペル』のリーディング公演は景気が良い話だけではなくて(イイトコロだけを話すのは嘘になる)、めちゃくちゃダメなところもあったので、そこも皆さんに共有しておきます。
皆様のお仕事の参考にしてください。
 
タイトルの『If it ain’t broke, don’t fix it.』は英語のことわざで、日本語に訳すと、『壊れてないものを修理するな』という意味です。
#会社の壁に貼っておいてください

当たり前の話ですが、「正解を出している計算式」をイジると、不正解になります。
しかしながら、多くの人間は、「改善」「アップデート」を問答無用で良いことのように捉え、「手をかければかけるほど良くなる」と妄信してしまいます。
 
『えんとつ町のプペル』を他人に預けると、必ずといっていいほど「台本」が変えられてしまいます。
「台本は変えちゃダメだよ」と釘を刺しても、必ずやっちゃうんです。
#会話ができない
 
「もっと、良くしよう!」という前向きな気持ちがそうさせるのでしょう。
 
しかしながら『えんとつ町のプペル』というストーリーは、これまでに何十万回もミリ単位の微調整を繰り返してきて、すでに完成しています。
#設定資料はリアルに数千枚あります
 
そこに、脚本執筆の経験がない素人(=脚本で結果を出していない人間)が、その場の思いつきで、手を加えると、必ず、ストーリーに矛盾が生まれます。
 
今回のリーディング公演でもそういった脚本の魔改造があって…
 
たとえば、リーディング公演では、船を風船で飛ばす仕様(絵本バージョン)になっていました。
「風船の方が夢があるよね」という判断だと思います。
 
しかしそれだと、プペルが仕立て屋で働く理由(ブルーノが仕立て屋である理由)が無くなります。
 
ラストシーンの船は、ルビッチの勇気とアイデア、そして、プペル・ブルーノの技術(裁縫)で飛ぶんですね。
#仕立て屋は伏線です
 
「温めた空気は上に上がる」というメッセージも込み込みで。
 
スコップ(オリラジ藤森君)が、町の皆に向かって「星を見に行くんだ!」と口を滑らせてしまうシーンがあるのですが、そこもリーディング公演では変わっていました。
 
「変わっていた」というか、スコップがうっかり言っちゃった『星』というキーワードの後に、余計なやりとりが足されていました。
 
本来は、スコップがうっかり言っちゃった『星』というキーワードがトリガーとなって、えんとつ町の人達がルビッチ達の挑戦を笑い、それに対してルビッチが勇気を振り絞って叫ぶ(反論する)という流れで、この流れを作る為にスコップを「お喋りキャラクター」にしています。
#こちらはキャラクターが伏線になってるパターン
 
ルビッチに叫ばせる為に、スコップを「お喋りキャラクター」にしているんです。
#将棋とかオセロやチェスみたいな感じ
 
「スコップがうっかり口を滑らせてしまったせいで」というキッカケを削ってしまうと(ボヤかしてしまうと)、スコップの「お喋りキャラクター」がただの賑やかし(とってつけたような笑い)でしか無くなっちゃうんです。
 
素人は、このあたりの文脈・数式を絶望的に読みとれないので、ついつい「こっちの方がいいかも!」と手を加えてしまいます。
 
ものすごーく結果を出しているプロから言わせてもらうと、「『脚本』はウン十億円、ウン百億円を生み出す設計図であり、キミが僕の脚本に手を加える才能があるのであれば、キミは今、そんな場所にはいないよ(脚本家として引く手あまただよ)」といったところです。
 
感情論で話すと、「我が子の顔を強引に整形されて(切り刻まれて)、綺麗でしょ?」と言われているような感じです。
 
今回のリーディング公演は「一度、日本公演を忠実に再現して、その反応を見た上で、チューニングする」という約束だったのですが、脚本が変わっていた為、オリジナル脚本の反応を見ることが叶いませんでした。
 
1歩目を踏み出したことは成功ですが、何のデータも取れなかったので内容に関しては失敗だったと思います。
#それでもスタンディングオベーションが起きてた
#だけど僕の仕事はあんなもんじゃない
 
一般的な話に落とし込むと、やはり『If it ain’t broke, don’t fix it.(壊れてないものを修理するな)』という言葉に尽きると思います。
 
自分達が取り扱っている作品・商品の現在の完成度を明らかにして、「完成するまでは徹底的に改善する。完成したら、絶対に手を加えない」を、チーム(会社)全体で共有しておくことが大事ですね。
 
ちなみにアウトは一回までで、次に一ミリでも脚本が変わっていたら、そんな恥ずかしいものを世の中に届けたくないので、ミュージカル『えんとつ町のプペル』の挑戦は終わらせます。
#西野ってそういうヤツじゃん
 
現場からは以上です。
 
【追伸】
 
https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。
宜しくお願いいたします。
 

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