おはようございます。
チビッ子に『チューリップの歌』を歌ってあげるときに、「…並んだ~、並んだ~、赤、白、黄色~♪」の『黄色』の部分を、コッソリと「Here we go!」に替えているキングコング西野です。
さて。
昨夜アップされた近畿大学の卒業式のスピーチの動画が話題になっております。
( ※こちら→https://youtu.be/dJT_L6d_fU8 )
近畿大学のスピーチの裏側については先日お伝えしたとおり。
フリーで話している部分と、ガチガチに計算している部分の両面があります。
まだ読まれていない方は、死ぬ気で記事を遡ってください。
話の構成としては…
①登場で失敗する→その失敗をネタにする
②好感度が低い西野→それを話のネタにする
③ムカつく相方の行動→それを話のネタにする
④ノンスタ石田のドジ→それを話のネタにする
ときて、
⑤「過去は変えられるよ。それが証拠に、今、皆さんの目の前で僕は『失敗した過去』を変えてみせたでしょ?」
⑥「過去が書き換え可能である以上、失敗なんて存在しないので、挑戦してください」でフィニッシュ。
…といったところでしょうか。
この構成を成立させる為には、エピソードトークで100%笑いをとらないといけないわけですが、そこは「お笑い芸人」なので得意です。
今回のお客さんの反応を見ていると「伏線の回収」が評価されているようなので、今日は、「伏線の回収」および「エモいストーリーの作り方」について、お話ししたいと思います。
(※近大のスピーチの内容に触れるので、まだ見られていない方は先に見てください)
エモいストーリーの作り方
僕は漫才師としてデビューしたわけですが、僕に本の書き方を叩き込んだのは漫才師の先輩方ではなく、劇作家「後藤ひろひと」です。
『パコと魔法の絵本』とかを書いたオジサンです。
デビュー間もなく彼に見つかって、仕事終わりで二人で呑みに行っては、朝まで「脚本論」を交わしていました。
すべてにロジックがあって、そこには、何千~何万通り『型』があって、「数学」や「オセロ」に近い議論でした。
『伏線の回収』なんてのは、初歩中の初歩で、
たとえば近大のスピーチでいうと、
「…涙する夜もあるし、挫折もするし、傷も背負うし、謂れのないバッシングを浴びることもある」
という台詞を、
「…差しのべた手を叩かれることもあるし、思わぬ方向に倒れることもあるし、下げたくない頭を下げなきゃいけないこともある」
としてまえば…
①差しのべた手を叩かれる=ファンに握手を拒まれた。
②思わぬ方向に倒れる=梶原がリクライニングを倒しているのに、うつ伏せになって寝た。
③下げたくない頭を下げる=石田がウォーターワールドの水を避けてしまった。
となり、「ここにも効いてきたか!」とすることは可能です。
ただ、目的は「技を決めることではなくて、エモい部分に着地すること」なので、技が決められるからといって、技を決めていいわけではありません。
後藤ひろひとと議論するのは、この部分ですね。
「伏線を回収した方がエモいのか、それともここは、小ワザは捨てて、体温が乗る言葉で突破した方がエモいのか?」
という部分。
近大のスピーチの「あの場面」では、小ワザを効かせるより、散々バッシングを浴びてきたキングコング西野に「謂れのないバッシングを浴びることもある」と言わせた方が、エモさポイントが上回るので、この場合、「伏線の回収」を捨てます。
頭の悪い評論家は、鬼の首をとったように、「あそこでも伏線を回収できたのに!」と“私は気づいてました感”を出しますが、所詮、評論家です。
『塩梅』が抜け落ちてしまっています。
ラーメンズ小林賢太郎さんとの対話
上京して数年経ったある日、幻冬舎の舘野さんから「西野に会いたがっている人がいる。今から来れない?」と電話がかかってきて、呑み屋に行ってみると、ラーメンズの小林賢太郎さんがいました。
開口一番「ボクと友達になってください」と言われて、その台詞がとても印象的で、映画『えんとつ町のプペル』にも、そのシーンを入れさせていただきました。
その夜の小林さんとの対話で一番盛り上がったのが、「オチをどこまで、お客さんに読ませるか?」というテーマでした。
「100万人が見て、100万人が想像もつかないようなオチを作ることは簡単だけど、はたしてそれはお客さんの満足度に繋がっているのだろうか?」
といった。
その時の、僕らの結論は「3割ぐらいのお客さんにはバレるオチを用意して、『あのオチ、俺、読めてたよ』と、3割ぐらいのお客さんをドヤらせてあげた方が満足度が上がるよね」でした。
無駄に技術が身に付くと、ついつい技術をひけらかしてしまいますが、大切なのは「エモさ」であり「満足度」で、常にお客さんの心臓に耳を傾けておく必要があります。
すべてのサービス業に通じる話だと思います。
現場からは以上でーす。
【追伸】
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