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ミュージカルのプレゼン公演のクリエイティブの進め方

2024.01.05 / 西野亮廣エンタメ研究所



お疲れ様です!
投稿が遅れてすみません!たった今、ホテルに帰ってきましたキングコング西野です。
#ニューヨークは深夜1時

昨日は通常業務以外に「ZOOMが8件(うち一件はTBSの番組収録)」という狂ったスケジュールで、朝から翌朝までお仕事をしておりました。
言うまでもなくミュージカル『えんとつ町のプペル@NY』のプレゼン公演の準備です。

「1月1日にニューヨーク入りをして、1月8日にはリハーサルが始まる」という強行スケジュールで、その間に、大量の契約書に目を通したり、サインをしたり、リハーサルスタジオの手配をしたり、僕の脚本を勝手に書き換えたスタッフにブチギレたり(笑)。
嵐のような毎日を送っています。

そんな中、今日は、ちょっと面白い「ミュージカルのプレゼン公演のクリエイティブの進め方」を皆さんに共有させていただきたいと思います。
他では聞けない話ですし、ミュージカルに限らずいろんな仕事に転用できる話だと思うので、是非是非お付き合いください。

 

プロジェクトの進め方を決める
 

今日は演出助手の「コートニー」と(対面で)長時間のミーティングがありました。
ここで今回の挑戦の条件を共有しておきます。

・1月8日にはリハーサルが始まる
・キャストさんの稼働時間は1週間で30時間以内!(例:1日6時間✖️5日)
・1月18日と19日が本番。
・美術セットは無し。

この中で「芝居」「ダンス」「歌」を作り込まなきゃいけないんです。
ちなみに歌は大小入れると20曲あります!

今回は“台本を持ちながらおこなう公演”なので「台詞を覚える負担」は無いのですが、やらなきゃいけないことが大量にあって、その上で、時間が無い。

まず間違いないのは、「リハーサルが始まってしまうと熟考する時間は1秒も無い」ということ。
リハーサルが始まる前までに演出家(僕)が全ての答えを用意しておいて、それを演出助手にシェアしておかなければなりません。

とはいえ、リハーサルが始まるまでに、演出助手のコートニーとの時間を次にガッツリととれるのは6日(土)だけ。
つまり、僕らは今日(アメリカは木曜日)と土曜日の2日間だけで、ミュージカル『えんとつ町のプペル』の全ての答えをシェアしなきゃいけません。

「せめて1週間もらえれば…」という気持ちはあるのですが、そんなのは許されていないのが今回です。リソースがかなり限られているわけですね。

ただ、こういうことってミュージカル制作にかぎらず、よくあるじゃないですか?
ていうか、最初は誰でも潤沢な時間や潤沢な資金を持ち合わせていないわけで、その中で、うまくリソースをやりくりできたヤツが上に上がっていく。
これは、古今東西普遍のテーマだと思うので、僕らの戦い方を共有させていただきます。

今日(1日目)のミーティングでは、台本を一度も開きませんでした。
台本を開いて、「ココはこんな感じで演出しよう!」といった感じで、いきなり作業を始めてしまうと絶対に間に合わないからです。

今日、コートニーと話し合ったのは…

① やらないコトを決める
② ルールを決める

の2つです。
台本を置いて、焦るスタッフをガン無視して、この2つについて話し合いました。
#2日間あるうちの一日をココに使いました

 

まずは「やらないコトを決める」について。
 

今回はチケットを販売して一般のお客さんを劇場に集める「本公演」ではなくて、投資家や関係者向けにおこなう「プレゼン公演」です。
「プレゼン公演」の目的は「可能性を見せること」で、もっとエグい話をすると、「この作品にお金を出したら、面白いことになりそうだし、リターンがありそうだな」と投資家に思わせることです。

「週に30時間」という限られた時間の中で19曲全てに「振り」をつけてしまうと(ダンスレッスンをしてしまうと)、練習不足により、一曲一曲のクオリティーが落ちてしまうので、「振り付けをつける曲」を3曲に絞ってしまって(練習のリソース)を集中させて、「練習する時間さえあれば、我々はこれだけのモノを作れまっせ」を投資家に見せつけて、残り16曲はダンスナンバーであろうが踊らない。

「Aパート」「Bパート」「Cパート」「Dパート」を満遍なく作るのではなくて、全リソースを「Aパート」の作り込みに集中させて、「Aをあれだけ作れるのであれば、B C Dも作り込めば、かなりのものになるだろう」と投資家に予想させる…という攻め方です。

つまり「何をやらないか?」ですね。
これはミュージカル制作に限った話ではなく、リソースに限りがある弱者の基本戦略で、皆さんの活動にも落とし込める話だと思います。

 

次に、「ルールを決める」ということについて。
 

繰り返しますが、台本を開いて、「ココはこんな感じで演出しよう!」といった感じで話し合い(西野の思考のシェア)を始めてしまうと、100ページの台本の最後まで辿り着くことはできません。
特に今回は「美術セット」も「衣装」も無い中で表現しなきゃ(投資家に想像してもらわなきゃ)いけなくて、その大喜利を一つ一つ考えていったら到底間に合わない。

なので、ルール(記号)を決めてしまうんです。

たとえば「煙突の上」は、どのシーンであろうと「ステージ下手前」で演じる。
そうすることで、キャストがステージ下手前に移動した時に、お客さんは「ああ、煙突の上に登ったんだな」と想像ができる。

たとえば「異端審問官」の基本姿勢は猫背&ストレートネックにしてしまう。
「下を向いている人」のメタファーです。
そうすることで、ラストシーンで異端審問官の姿勢を真っ直ぐにした時に、お客さんは「ああ、マスクを取った(上を向いた)んだな」と想像できる。

たとえば、本来は存在しない「煙の音」を作ってしまう。(※楽器は使えます)
町中でその音が鳴っていれば、「この町は黒い煙でモックモクなんだな」と想像できるし、“キャラクター”が喋っている時に、その音が鳴っていれば、「この人の気持ちは今、曇っているんだな」と想像できる。

…みたいな感じで、ルール(記号)を決めてしまえば、いちいち西野に「そのシーンをどう表現するか?」の判断を仰がなくてもいい。

以上2つです。

まぁ、よくある話っちゃあ、よくある話なのですが、ポイントは、この2つ(「やらないコトを決める」&「ルールを決める」)を決めることに、制作時間(演出家と演出助手のミーティング)の半分を使ったということ。

かなり極端な時間割ですが、限られた(少ない)リソースで戦うチームには必要な時間割だと思うので、参考にしてみてください。

現場からは以上です。
ブロードウェイ戦はまだまだ続きます。

【追伸①】
https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。
宜しくお願いいたします。



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