おはようございます。
弾丸の北海道旅にて、コロコロバックを機内に忘れて、翌朝(今朝)無事に空港で回収した後に、ホテルにスマホのバッテリーを忘れたことに気がついたキングコング西野です。
#移動すればモノが無くなる
さて。
今日は『地方の集客装置を考える』というテーマでお話ししたいと思います。
僕自身の勉強&確認回でもあるので、今日はちょっと長いです。
時間に余裕がある時にでも読んでください。
#読み飛ばしてもらってもいいよ
「理由・原因」を知れたら大満足
作り手として、作品を観に行く時や、イベントに参加する時は、
「面白かった」「面白くなかった」は、もはやどうでもよくて…
「何故、面白かったのか?」「何故、面白くなかったのか?」を収穫することが目的になっていたりします。
たとえ面白くなくても、「何故、面白くなかったのか?」の答えが明快であれば、(作り手としての)僕の中ではものすごく満足度の高い体験となります。
なので、地下アイドルをたくさん出演させて、さらには、毎日同じ演目をやっているのに「通し券」みたいな売り方をしている舞台を選んでは、
「何故、この脚本家&演出家は、作品でお客さんを呼べないんだろう? どんな本を書いて、どんな演出をしているんだろう?」
という確認作業で、劇場に足を運んだりします。
そういった作品では、「ツッコミができないアイドルに『○○かよっ!』みたいなツッコミをさせて、最前列を陣取っているコアファンだけが過剰に笑い、後ろの方に座っている新規顧客に『…いや、この内輪ノリにはついていけねぇわ』と思われる」という事故(作品内ボケ&ツッコミがネガティブキャンペーンになっている)が多発していたりします。
「…なるほど。あれをやっているから、いつまでたっても観客動員を増やせないんだな」という“気づき”があれば、(作り手としては)とても有意義な時間になります。
阿寒湖(北海道)の湖畔でおこなわれている『ナイトウォーク』に行ってきたよ。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古がお休みとなった昨日は、飛行機に飛び乗って、北海道に向かいました。
目的は、阿寒湖の湖畔にある夜の森で開催中の
体験型アクティビティ「KAMUY LUMINA(カムイルミナ)」の内容を確認すること。
デジタルアート&ナイトウォークのイベントで、クリエイティブはカナダのデジタルアート集団『MOMENT FACTORY』。
世界中で展開されているナイトウォーク・シリーズですが、阿寒湖の『カムイルミナ』は2019年に開業し(※2020年はコロナで中止)、初年度は国内外から累計3万4千人を動員しています。
今年は6月22日~11月14日までの5ヶ月間毎夜開催することが発表されています。
2019年の開催期間も5ヶ月間だとすると、1日の動員数は平均220名ほど。
日没後(18時~22時)におこなうイベントなので、1時間あたりの動員は50名ほど。
機材レンタル費、電気代や、人件費…等のランニングコストを考えると、イベント単体でペイできているかどうかはかなり怪しいラインではありますが、「補助金」で回っているのでしょう。
参考までに言うと、同じ「夜の森を舞台にした屋外イベント」だと、僕らが兵庫県川西市の山奥でおこなった『チックタック ~光る絵本と光る満願寺展~』の動員が、2週間(1日3時間)で3万人だったので、今回のナイトウォークの集客がどれほどなのかが分かると思います。
今回、僕が知りたかったのは、「行政を絡めて(補助金も出て)、カナダのデジタルアート集団を呼びよせておこなっているイベントが、何故、話題になっていないのか?」ということと、照明演出の確認です。
イベントのクオリティーが高ければ話題になっているハズなのですが、話題にはなっていないので、「クオリティーが、どう低いのか?(どこでエラーをおこしているのか?)」を確認しに行ってまいりました。
改善ができる環境づくりが大切
僕が参加したのは、金曜の夜20時からの回(ゴールデンタイム)で、お客さんは20名~25名といったところ。
チケット代は『大人=2800円、子供=1400円』で、現場のスタッフさんは20名ほど。
#さすがにボランティアスタッフじゃなさそう
「グッズ販売」も無く、売り上げは「チケット代のみ」なので、さすがに運営的には厳しそう。
#補助金が無いと回らない
#田村Pがずっと算盤をはじいていました
これは「地方イベントあるある」なのですが、補助金で回っている(回せている)と、「キャッシュポイントを開発しよう」という思考になりにくいので、ここはプロデューサー(運営サイド)が頑張らなきゃいけないところです。
落ちるお金が増えると、その分、作品のアップデートや、スタッフの労働環境の改善に充てられて、好循環が起きるので。
「運営は改善の余地だらけだなぁ」と思いつつ、それより何より気になったのは『KAMUY LUMINA(カムイルミナ)』の【ストーリー】です。
ナイトウォークは、プロジェクションマッピングで映し出される「フクロウ」がナビゲーターとなって、「飢えに苦しんでいた人間界を救うためフクロウと小鳥のカケスが活躍する(阿寒湖に伝わる)アイヌ伝説」が展開されていきます。
行く先々で、プロジェクションマッピングのフクロウが出てきて、その場所でおこなわれていることを説明するのですが……お客さんが歩くスピードは千差万別。
歩くのが早い人は、「一つ前のグループが見るマッピング(映像)の後半」を見ることになり、そこで、係の人から「まもなく、映像が最初から始まりますので、もう少々お待ちくださーい!」と注意を受けることになります。
つまり、「ストーリーがある以上、自分のペースで歩けない」わけで、ナイトウォークの一番のセールスポイントである「自由に歩き回れる」と摩擦を起こしちゃってるんです。
これは、「ストーリーを見せたいのか?」それとも「ライトアップ&マッピングで演出した夜の森を見せたいのか?」をキチンと選ぶ必要がありそうです。
ちなみに、チームラボが佐賀県で仕掛けているナイトウォーク(神々が住まう森)は、ストーリーをキッパリと捨てています。
個人的にもチームラボのやり方に賛成で、夜の森を歩き回る体験なんてなかなかできないので、自分のペースで歩いて、自分の好きなところに、好きな時間を割きたいなぁと思いました。
ストーリーを見たいのなら、映画か舞台かNetflixを選びます。
このあたりは、もしかすると、「アイヌの歴史をキチンと紹介する」が、補助金の取引条件に入っていたのかもしれません。が、「お客さんの歩くスピードを指定してまで、ストーリーを紹介する」は御法度で、取引条件をクリアするにしても、他の方法がありそう。
道中、気になったのは、現場のスタッフさんが「あっちを見てくださーい」と何度も説明していたこと。
森を抜けて湖が広がった場所で、湖の方を見ていたら、「山側を見てください!」とスタッフさんからアナウンスされ、「ようやく森を抜けて、湖に出たんやから、湖をライトアップするポイントやと思うやんか…」と田村Pが一人でブツブツ言ってました。
「現場スタッフに同じ説明をさせる」は屋外イベントに限らず、チーム作りとして悪手で、クリエイティブとしても、西野的には「お客さんの黒目の動線ぐらいは設計しとけよ」といったところ。
ここでの最大の問題は、このイベントが「6月22日から始まっているイベント」だということ。
生モノなので「改善点がある」のは問題ないのですが、「改善点が、いつまでも改善されていない」は問題で、まず間違いなく、カナダのデジタルアート集団『MOMENT FACTORY』の“クオリティーチェック”が期間中におこなわれていない。
「クリエイターがお客さんとしてイベントに参加して、横にいるお客さんが毎回躓いているポイントを洗い出して、翌日には改善する」が繰り返されていない。
これは「阿寒湖←→カナダ」という物理的な距離の問題があるのかなぁと思いました。
クリエイターが頻繁に通える距離じゃない。
キチンとブランド化に成功している地ビールは、自社の地ビールを置いてくれているBARに抜き打ちで行っては、「サーバーが綺麗に使われているか?」の品質チェックをこまめにおこなっていたりします。
「改善」にキチンとコストを割いていて、「改善」にキチンとコストを割ける「環境」を作っているんですね。
それが、『KAMUY LUMINA(カムイルミナ)』ではおこなわれていない雰囲気でした。
2019年に大阪城でおこなわれていたナイトウォークでも、同じ印象を受けました。
あの時も、カナダのデジタルアート集団『MOMENT FACTORY』がタッチしていたと記憶しています。
#間違ってたらごめん
これはイベントに限った話ではなく、多店舗展開する際には、やっぱり「クオリティーチェック&改善できる“環境”」を作ることが最優先で、その環境が用意できないのであれば、ブランド低下に繋がるので、展開を急いじゃダメだなぁと思いました。
一方で、世界各地にある「夜の森」をキチンと資産化している『MOMENT FACTORY』のお仕事は最高だなぁと思いました。
友達と一緒に、暗い夜の森を歩いていくのは楽しいです。
廃炉となる製鉄所を舞台に『えんとつ町のプペル』のナイトウォークを仕掛けたいので、「製鉄所が閉鎖することになったけど、この場所をどう使えばいいの?」とお困りの方は、御一報ください。
今日の記事は長くなっちゃってごめんね❤️
現場からは以上でーす。
【追伸】
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