おはようございます。
TKOのお二人の名前「木本」「木下」は、ほとんど同じ意味だなぁと思ったキングコング西野です。
#どちらも木の根元らへんのことを言ってる
さて、今日は「『モフ』誕生の秘密」というゴリゴリにクリエイティブな話をしたいと思います。
一部の方を除いては、仕事の役に立つような話でもないので、「へぇ〜、そうなんだ」という感じで気軽に読み進めてください。
世界は「キャラクター(制限)」と「シチュエーション(問題)」で構成されている。
メイキング映像(制作の裏側)が好きな人は、「キャラクター達が作家の手を離れて、勝手に喋り始めた(動き始めた)」という言葉を耳にしたことが1度や2度はあると思います。
「キャラクターが勝手に喋り始めた」は何も、神秘的で、スピリチュアル的な、心霊現象ではありません。
とても「自然」な現象なのです。
そのことを理解するには、そもそも「キャラクター」が何かを理解する必要があります。
結論から言うと、創作物であろうと、現実世界であろうと、「キャラクター」というのは、『ルール(制限)』です。
「真っ先に飛び込んでいくキャラクター」というのは、「何か問題が起きた時に、真っ先に飛び込んでいく」というルール(制限)の奴隷なわけですね。
つまり「キャラクターを作る」という作業は、「ルール」を作る作業になります。
そして、「物語を作る」という作業は、「ルールが決まっている駒に、シチュエーション(問題)を用意する」という作業になります。
「誰にも言ってはいけない秘密」が含まれているシチュエーションに、「おしゃべりスコップ」を投入してしまうと、その秘密がスコップの手によって拡散されてしまうことは問答無用で決定するわけですね。
そこに作者(西野)は介入できません。
ここで、「おしゃべりスコップ」が「誰にも言ってはいけない秘密」を、秘密のままにしてしまうと、それは「ルール違反」になり、結果、「キャラクター」がボヤけちゃうんです。
どうしても秘密を秘密のままにしておきたければ、いくら主要キャラであろうと「おしゃべりスコップ」をそこに配置してはダメで、その為には、かなり前の段階から、「おしゃべりスコップ」の配置を決めておく必要があります。
物語を作る作業は、基本的には「将棋」と同じで、「手持ちの駒をどこに置くか?」しかありません。
棋士がどれだけ願ったところで、「飛車」というキャラクターは真っ直ぐにしか進みませんし、「角」というキャラクターはナナメにしか動きません。
将棋が最後に「詰む」理由はまさにそれ。
「良い物語」というのは、最初の「ルール決め(キャラクター作り)」が良くできています。
「能力系」のバトル漫画を想像していただくと、ここまでの説明が腹落ちすると思います。
やっぱりエネルを倒すのは、ルフィーなんです。
尾田栄一郎先生が神の手で勝たせたわけではなくて、あれは、「ルフィー」(というルール)が勝ったんです。
人間に置き換えてお話しします。
「向き不向き」も、極端なものは、キャラクター(ルール)になります。
「大勢のタレントがいる前では結果を出せない」というルールを宿しているのが「梶原雄太」です。
彼を勝たせたいのであれば、作者がやる仕事は「YouTube」というシチュエーションを与えることぐらい。
その中で、どう動き回るかは予測できませんが、少なくともルール違反を犯さなくて済むので、キャラクターが明確になる。
「梶原雄太が雛壇の仕事を頑張る」というのは、極めて不自然なことで、作者(梶原本体)の意思を介入しすぎている。
結果、ルール違反を犯してしまうので、キャラクターがブレブレになって、見ている側も、どこを応援すればいいか分からない。
時々、「僕って、何をすればいいですか?」とアドバイスを求められることがあるのですが、僕がその時に考えるのは、相談者の方の「ルール(制限)」です。
相手陣地の一番奥に「歩」を置いても、「歩」には「バックできない」というルールがあるので、死に駒になるだけです。
「いやいや、僕、バックできますよ!」と言われるかもしれませんが、バックしちゃったら、ルール違反で、キャタクターがよく分からなくなる。
「ひな壇で結果を残そうとする梶原雄太」みたいなことです。
なので、相談者の方が「歩」なのであれば、どうなるかはまだ分からないけれど、「この辺に置いておかないと、身動き取れなくなるよね」という相場(の位置)はあるので、その相場をオススメするようにしています。
…とはいうものの、アドバイスを求めてきた方の「9割」は“自分なりのアレンジ”を加えちゃったりするので、しばしば頭を抱えます。
世界が「シチュエーション」と「キャラクター(制限)」の二つで構成されているのは、現実もファンタジーも同じです。
…長くなりましたが、ここからが本題です。
ご安心ください、本題はすぐに終わります。
『モフ』誕生。
前半前でご説明したように、「キャラクター」を上手く配置し、彼らにイイ感じのシチュエーションを与えると、もはや、作者が付け入る隙はありません。
シチュエーションを与えるのは作者の仕事なのかもしれませんが、キャラクターを動かすのはキャラクターの仕事でありますので、なので、「キャラクター」の設定(ルール決め)というのがメチャクチャ、モチャクチャ大事です。
現在、3日間ほどホテルに缶詰になって、『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』の脚本執筆を進めていますが、この3日間の最大の収穫は、今回の冒険のバディ(相棒)となる『モフ』が誕生したことです。
【モフのイラストをeluに出品してみた】
→https://elu.jp/item/6Jvpj7U1vktl99BTVfh8
『モフ』は、ルビッチが「変な世界」で最初に出会った性格の悪い太っちょの猫です。
身体がモフモフしているので、『モフ』という名前にしました。
どなたか、西野のネーミングセンスを殺してください。
『えんとつ町のプペル』という作品を、何十年も、何百年も残していくことを考えると、
その時代その時代のクリエイターが、「キャラクター(制限)を使って、キャラクターにシチュエーションを与えられるようにしておかなければなりません。
#どこまで先を考えとんねん
そうなってくると、新キャラを「より強いキャラクター」にしてしまうと、これまでのキャラクターの出番が無くなってしまいます。
それにより、物語を魅力的に進めることはできますが、「一話完結モノ」で、都度都度、リセットすることはできません。
それらを踏まえると、今回の新キャラは強くしちゃダメで、だけれど、出ずっぱりのキャラクターであるので、「プペル」や「スコップ」に負けない魅力は持っておかなきゃいけない。
そこで、「ムカつくけど、いつも正論を言う」というルールを『モフ』に与えて、最後の最後で(どこか)憎めないビジュアルにしました。
おそらく、ここから他のキャラクター達とイイ感じの化学反応を起こしてくれると思うので、缶詰3日目の今日は、ちょっと『モフ』を走らせてみようと思います。
「いつも、こんな感じで物語(ときどき現実)を作っていますよ」という裏話でした。
現場からは以上です。
【追伸】
「https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。
宜しくお願いいたします。
※添付画像は、今回、ルビッチが迷い込む『千年砦』のイメージです。