稼働率からの脱却 ~キミは土台を作る人じゃない~

投稿日:2022.06.07 / 西野亮廣エンタメ研究所

※この記事の内容は外部に発信していただいて大丈夫です。


おはようございます。
メキシコに到着して最初に食べた食べ物が「おっとっと」(森永製菓)のキングコング西野です。

さて。
今日は「稼働率からの脱却 ~キミは土台を作る人じゃない~」というテーマでお話ししたいと思います。

 

予約が埋まらないと回らない病

 

今日の話は、昨日のサロンで投稿した『見上げる家』(ハウススタジオ@西野邸)がイメージに近いので、そちらを例にお話ししたいと思います。

『見上げる家』は、「僕が気持ち良く仕事をしたい場所」を目掛けて作っているので、どう考えたって万人ウケする空間ではありません。
そもそも玄関を「1.5階」に構えておりますので「バリアフリー」とは無縁で(階段が5〜6個あるよ)、車椅子の方がご利用される際は強固なチームプレーを必要とします。
#頑張って

管理コストを下げる為に「ゴミは持ち帰り」にするでしょうし、「ペットの持ち込みは禁止」にするでしょう。
「時間貸し」という形をとらず、「朝10〜夜10時までの好きな時間を好きなだけ使ってください」といった「半日貸し」という形をとるので、「いや、借りるのは1時間でいいんだけど…」という人からすると、利用料金に無駄が発生します。
#1時間であろうと12時間であろうと同じ値段

どうやら、お客さんをかなり選ぶハウススタジオになりそう。

先日ヒョンなキッカケで田村Pと『見上げる家』の利用料金の値段設定の話になったのですが、そこで彼女が開口一番「まぁ、月に1〜2組ぐらい借りてもらったらいいわけだから…」と言ったのがとても印象的でした。

稼働率(回転数)を上げて予算を回収するつもりなんて毛頭無いんですね。
「1ヶ月のうち、28日ぐらいは予約が入っていなくても構わない」という前提で、話を進めている。

もちろん僕もそのつもり作っています(伊豆大島のホテルも同じく)。が、おそらく多くの方が「1ヶ月のうち、28日ぐらいは予約が入っていなくても大丈夫」というビジネスモデルを作ろうとはしません。
皆が作るのは「予約が(かなり)埋まっていないと成立しないビジネスモデル」です。
別の言い方をすると「たくさん売らないといけないサービス」です。

そうなる理由は「万人に向けて『役に立つ』を売っているから」に他なりませんが、人口が減っている&高齢化が進んでいる(お金を使う人が減っている)国で今後もサービスする以上は、どこかのタイミングで「あんまり予約が埋まっていなくても回る高価格帯のサービス」「あんまり売れなくても平気な身体&精神」を作る必要があります。

稼働率至上主義からの脱却です。

しかしまぁ、言葉で言うのは簡単ですが、実際にやるとなると簡単ではありません。
「稼働率とかどうでもいいっす」と言い切るには、「万人ウケはしないけど、一部の人に、強烈に愛される(大きなお金を出してもらう)」をやらなければいけないわけで、それらは、SNSやYouTubeのアルゴリズムをハックすること(計算式を解くこと)では獲得することはできません。

「あ〜、この感じ、超スキっ!」と発狂される世界観を作らなきゃいけないんですね。


 

目を覚ませ。誰もキミにそんな仕事を求めていない。

 

さて。

「世界観が重要」ということは分かったんだけど、その「世界観」とやらはどうやって作るの?…という命題が残っています。

これに関しては、耳障りの良い言葉を贈ってゴキゲンを伺っても仕方がないので、包み隠さずに正直お伝えすると、
あなたが100メートルを9秒台で走れないように、
あなたがハーバード大学を首席で卒業できないように、
あなたが那須川天心君にキックボクシングで勝てないように、
あなたが「人を惹き付ける世界観」を生み出すことはできません。

断言します。
「絶対にムリ!」

「世界観の創造」は圧倒的な知識や圧倒的な経験が必要で、たまたま持ち合わせたセンスや感覚でクリアできる問題ではないからです。
まぁ、要するに「専門職」だということです。

専門職の中でも、特に専門職で、
ウン十億円や、ウン百億円を生み出す仕事です。

(※)これを言っておかないと卑怯なので言っておきますが、『えんとつ町』は僕一人で作った世界観ではありません。
照明や音楽も含む、数百人のスタッフと力を合わせて作った世界観(IP)です。

ところが、しばしば、「子供達を救いたい」という企画を立ち上げるところまでは良かったものの、そこに「私」の世界観を織り込んでしまって、その瞬間、まわりから「(どこにでもあるような)お前の世界観なんて知ったこっちゃねえよ」と思われ、まわりから総スカンをくらう「勇者系ママ」が誕生します。
皆さんも見たことがあるでしょう?

子供達を救いたいのか?
それとも、自分の世界観を表現したいのか?

問わなければいけないのはそこで、子供達を救いたいのであれば、「世界観の創造」という超絶専門職からはド素人は早々に手を引いて、
すでに支持を集めている世界観にあやかる方向に舵を切った方がいいと思います。

ついついカッコ良く見えてしまうのかも知れませんが、「ゼロ→1」の仕事なんて、ほぼ不可能です。

稼働率主義から脱却するには、「私の世界観どう?」から早々に手を引いて、すでに支持を集めている世界観に自分の技術を絡めていくことが大事なのだと思います。

僕は今、メキシコの海辺の街にいるのですが、フラッと入ったお店がこんな感じ。
#最後に画像添付しています

ここには「ゼロ→1」の仕事などなく、代々紡がれてきた「メキシコの海辺の街の世界観」にあやかる形で、デザイナーさんや建築士さんや大工さんが自分達の技術を丁寧に絡めていて、その結果、「この世界観、超好きー!」という人を集めています。
自分で全部やろうとするのではなく、こうしてバトンを繋ぐように生きていくことが今、求められているのだと思います。

現場からは以上です。

【追伸】

https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。

宜しくお願いいたします。











 

『見上げる家』のこのへん(黄色い線で囲ったあたり)に「アンティークの扉を埋め込んでください」と追加発注する西野。
目線が上がるのでイイ。

 

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