先日の『ノベルティ』に関する投稿に対して、「なぜ、ノベルティ○○の方が作家性が浮き彫りになるのですか?」と質問を受けたので、分かりやすく具体例をあげますね。
僕、ノベルティソングの女王は中島みゆきサンだと思ってるんだけど、『Dr.コトー診療所』の主題歌に使われていた『銀の龍の背に乗って』という曲、知ってる?
「これぞ、中島みゆき!」な曲なんだけど、注目すべきは“歌詞”ね。
この曲の歌詞の凄まじさ(中島みゆきの天才っぷり)を知る上で、まずは、『Dr.コトー診療所』のストーリー設定を知っておく必要があるんだけれど、主人公は、その昔、都内の大学病院で重大な医療ミスをして、流れ流れて、海を渡り、孤島の診療所に勤めることになる。
つまり、主人公が島の人達と触れ合いながら“過去の失敗から立ち直っていく”ストーリーなわけだ。
さて、あなたなら、どんな歌詞をつける?
「前を向いていこう」
「あの日の失敗を『失敗』で終わらせない」
とか何とか、その辺りだと思う。
これに対して中島みゆき大先生は、歌詞に出てくる「自分」を「まだ飛べない雛みたいに非力だ」とした上で、
「急げ悲しみ 翼に変われ
急げ傷跡 羅針盤になれ」
と表現した。
「傷跡」が「羅針盤」になるという天才性よ!
中島みゆき大先生以外に、誰が書けるんだよ、こんな歌詞。
んでもって、極めつけはサビの…
「銀の龍の背に乗って 届けに行こう命の砂漠へ
銀の龍の背に乗って 運んで行こう雨雲の渦を」
なんだかカッコイイけど、『銀の龍』って何?
これ、気になるよね?
この『銀の龍』の正体について、中島みゆき大先生はインタビューで答えてるのよ。
「船で島に渡る時に、航跡で白波が立つじゃない。あれよ。」
つまり、これが決定打なんだけど…
もともと存在していた曲を『Dr.コトー診療所』の主題歌にしたわけじゃなくて、
『Dr.コトー診療所』のストーリーを受けて作った完全ノベルティソングなんだよね。
ノベルティソングなのに、「Dr.コトー」の「ド」の字も入れてない。
「医者」なんてワードも無ければ、「孤島」というワードも無い。
それでいてストーリーを網羅している。
ドラマの固有名詞を全て『羅針盤』や『龍』や何かに置き換えているから、聴き手は自分の状況に置き換えて聴くことができる。
失敗を活かせ → 傷跡よ、羅針盤になれ
航跡の白波 → 銀の龍
ここに『作家性』がメチャクチャ出るんだよね。
作家の力量があからさまに出る。
だからノベルティは面白いんだよ。
僕はノベルティ絵本を作りたいね。
「それを、そう表現するかぁー」と驚かせたい。
https://www.facebook.com/groups/157664324853695/posts/201761253777335/