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脚本執筆における「IKEA効果」~自分の作品を過大評価する心理と向き合う方法~

2025.02.04 / 西野亮廣エンタメ研究所



投稿が遅くなってすみません!
豚イノシシとのドライブロケで盛り上がっておりました。
#配信をお楽しみに

さて。
今日は『脚本執筆における「IKEA効果」~自分の作品を過大評価する心理と向き合う方法~』というテーマでお話したいと思います。

さっそく本題です。

 

そもそも脚本が面白くない
 

日本とニューヨークで、週1ペースで舞台作品を観ていますが、集客に苦戦している舞台(および劇団)は、おしなべて『脚本』が弱いです。

脚本が面白くないと、キャストは積極的に告知をしないし(友達の時間とお金を無駄に奪いたくないから)、何より現場スタッフの士気が上がりません。
そして言うまでもありませんが、脚本が面白くないとリピーターが増えない。

どれだけ、素晴らしい照明や美術セットや音楽や演技を並べても、脚本が面白くなかったら全て無駄になってしまいます。

これを「脚本家の才能不足」という言葉で片付けてしまうと話が終わってしまうので、今日は「弱い脚本が生まれてしまうシステムに欠陥がある」という角度からお話ししたいと思います。

まず、「規模(キャパ)が小さい舞台」の場合、客席に座っているのは”ほぼ身内“です。
そして、その身内は「観劇後の感想(SNSの投稿)を運営にチェックされる」ということを知っているので、「脚本がおもんなかった」とは口が裂けても言えない。

「規模(キャパ)が小さい舞台」の感想は、昔も今も、面白くても面白くなくても、称賛の声しかありません。

おかげで運営サイドは「成功した」と思ってしまいますが、それが「面白くない舞台」だった場合、お客さんは何も言わずに黙って離れていきます。
なので、いつまでたってもキャパが大きくならない。

要するに、日本の小さな劇団には「フィードバック機能」が付いていないわけですね。
#ここが課題

以前も少しお話ししましたが、そもそも、「面白くない脚本」が生まれてしまう背景には「脚本家のIKEA効果」があります。

IKEA効果とは、「自分で作ったものに対して、実際の価値以上に高い評価を与えてしまう心理的傾向」のことです。
IKEAの商品のように、人は手間をかけた分だけ、その対象に特別な価値を感じてしまうわけですね。

脚本執筆はこのIKEA効果のド真ん中にある作業です。
長時間をかけて構築した物語やキャラクターには、どうしたって強い愛着が生まれてしまう。

その愛着が時に「このシーンは絶対に必要だ」「このキャラクターのセリフは削れない」といった思考を生み、脚本の質を冷静に判断することが難しくなるわけです。

さて。
脚本執筆におけるIKEA効果の弊害は以下のとおりです。

① 冗長なシーンを削れない

脚本執筆の基本は「不要な要素を削ること」ですが、しかし、執筆時に苦労したシーンや、美しい描写、長年温めてきたアイデアほど削除しづらかったりします。
「これは必要なシーンだ」と思い込んでしまい、結果としてテンポの悪い作品になる。

② 客観的なフィードバックを受け入れにくい

他人から「このシーンは不要では?」「キャラクターの動機が弱い」と指摘されたときに、「いや、これは絶対に必要なんだ!」と反論してしまうのもIKEA効果の影響。
苦労した分、他人の意見を受け入れづらくなり、脚本の改善が滞ることがある。

 

脚本家のIKEA効果とどう向き合うか?
 

この「おもんない脚本が生まれてしまう問題」をシステムでクリアするには一体どうすればいいのでしょうか?

たとえば、ブロードウェイでは「リーディング公演」というものがあります。

作品を作り出す前に「本読み公演」をおこなって、そこでフィードバックをもらうわけですが、ここでのポイントはリーディング公演の対象が「お客さん(ファン)」ではなく、「投資家」であることです。

投資家は「自分が投資することになるかもしれない作品」を観るわけですから、フィードバックに遠慮がありません。

投資家は「面白くない点を改善しないかぎり投資をしません」というカードを持っていて、
運営サイドは投資家が集まらないとそもそも作品を作り始めることができないので、「聞く耳」を持っている。

ブロードウェイの作品作りには、極めてフェアな「フィードバック機能」が搭載されているわけですね。

出版も似たような感じです。
作家の隣には「担当編集者」がいて、常にフィードバックがあります。
忘れちゃいけないのは、担当編集者というのは、「出版社」という名の投資家のまわしものだということ。

出版社は「面白くない点を改善しないかぎり投資をしません(出版させない)」というカードを持っていて、
作家は出版社に協力してもらわないと本を出版することができないので、「聞く耳」を持っている。

つまり、ブロードウェイ作品にしても、出版にしても、正しいフィードバックをくれるのは「お客さん」ではなくて「投資家」で、作者は「投資家」の言うことにしか耳を傾けない。

先ほど、「日本の舞台にはフィードバック機能が無い」と書きましたが、厳密に言えば、「日本の舞台には投資家がいない(からフィードバック機能が無い)」といったところです。

 

では、どうすればいいのか?
 

「ロングラン公演」の可能性がない限り、舞台に投資価値は無いので、日本の舞台制作に投資家を絡めるのは極めて難しいです。

となってくると「脚本家のIKEA効果」が野放しになってしまいそうですが…方法は一つだけあるかなぁと思っています。

それは、「スポンサー候補向けにリーディング公演をおこなう」です。

スタジオにスポンサー候補をお呼びして、そこで「本読み公演」をおこなう。
スポンサー候補は「面白い」と思えば、スポンサーになり、「面白くない」と思えば、サヨウナラ。

その時に「面白かったけど、長かった。もう少し短ければ、スポンサーを検討します」といったフィードバックも出てくると思うのですが、「スポンサーになってもらえる」がチラつけば、脚本家も「聞く耳」を持つでしょう。

日本の舞台に求められているのは、こういった「フィードバック機能」ですが、ただ、自分からフィードバック機能を設けるクリエイターがどれだけいるか?は甚だ疑問です。

イベント主催者にある「正常性バイアス」や、脚本家にある「IKEA効果」を、どう仕組みで潰すか?を今後も真剣に考えていきたいです。

現場からは以上です。

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