おはようございます。
「◯◯年ぶりとなる天体ショー」というワードを毎年聞いているような気がしているキングコング西野です。
さて。
今日は、『DAO村の人達(日本のWeb3界隈)は、エンタメシーンの「権利」をもう少し勉強した方がいい』というテーマで、結構ゴリゴリの話をしたいと思います。
さっそく本題です。
ボトルジョージの二次創作
今朝、タラタラと生配信(Voicy)をしていたら、リスナーさんから「チムニータウンDAOで『ボトル・ジョージ』(※西野が現在制作中のショートアニメーション)の二次創作の話になってます!」という報告を受けました。
僕はDAOには参加していないので、中で起きていることは、スタッフ(なな)から聞く以外のことは何も知らないのですが、まぁ、タイトルを聞けば、そこでのやりとりは容易に想像できます(笑)
これまでのNFTの売り上げで『ボトルジョージ』を買って(=ボトルジョージの制作費を出して)、『ボトルジョージ』の権利を握る…というところから始まった話だと思うのですが、
そこで起きているのは、
「Web3なんだから、二次創作を自由にさせろ〜!」派と、
「いやいや、二次創作を解放してしまうと、変なモノが出来上がっちゃって、作品の信用が落ちるかもしれないじゃん」派の議論でしょう。
どちらも正義ですが、この議論をするなら「(自分達が)どこまで行きたいのか?」を明確にした方がいいと思います。
目先の小銭を稼ぎたければ、作品の二次創作を解放して、各々が「ボトルジョージ饅頭」や「ボトルジョージ靴下」「シン・ボトルジョージNFT」を作ればいい。
#それはそれでイイ
ただ、落ち着いて、まわりを見ていただきたいのですが、「二次創作をOKにしたDAO発のIP(キャラクター)」が、世間一般に届いているところを見たことがありますか?
どちらかというと、DAO村の村民だけでウェイウェイやってるイメージがありません?
「DAOは最先端だから、まだまだ、その(世間に届く)時期じゃないけど、いずれ…」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言うと、「二次創作をOKにしたDAO発のIP(キャラクター)」が、ブロードウェイの舞台や、ハリウッドの映画や、ラスベガスのサーカスのステージに立つことはありません。
理由を説明します。
めちゃくちゃイメージしやすいところで言うと…たとえば日本の映画だと「製作委員会」という形で、いろんな企業(日本テレビさんとか、バンダイさんとか)がお金を出し合って作ったりするんです。
お金を出した日本テレビさんの取り分は何かというと、「売り上げの分配」以外に、「テレビ放送の際の放映権」なんですね。
「ジブリ映画に大きなお金を出す代わりに、テレビ放送する際は、日本テレビで!」という約束をするわけです。
バンダイさんもそう。
「ジブリ映画に大きなお金を出す代わりに、グッズ化する際は、バンダイで!」という感じで、作品にお金を出すことで「グッズ化」の権利も獲得するわけです。
その際、「いやいや、この作品は、Web3のノリで、もう皆が勝手にグッズを作ってます」となったら、バンダイさんは「グッズ化」の権利を獲得できないわけですから、作品には出資しないんですね。
ここで知っておいた方がいいのは、「大手に出資してもらうことの最大のメリットは『制作費の確保』じゃない」ということ。
お金を用意するだけなら、ぶっちゃけ、自分で死に物ぐるいで掻き集めるか、地元のお金持ちのお爺さんに出して貰えばいいんです。
大手に出資してもらうことの最大のメリットは、「出資分を回収しようとする大手の宣伝力」です。
ジブリ作品に出資した日本テレビさんは、本気でジブリ作品を宣伝するし、バンダイさんもそう。
これが「大手にお金を出してもらう」ことの最大のメリットです。
権利を一般の方に分散させてしまうと、当たり前ですが、大手はその権利を買いません。
そうすると待っている展開としては「自分達で宣伝する」になるわけですが、そうなると、お金を回収することはできても、身内ノリの域を越えない。
世界に出てみるとすごくよく分かるのですが、たとえば、ブロードウェイ一つとっても、バッキバキの村社会(日本の比じゃない)で、彼らは、自分達にメリットがない作品はコミュニティーの中には絶対に入れない。
「日本で売れたから、今度はブロードウェイで」みたいな感じのステップアップ夢物語は存在しなくて、「いかにブロードウェイ村に入り込むか?」が重要になってくる。
エグい話をすると「誰に投資してもらうか?」が重要になってきます。
投資家は投資分を回収しようとするので、村の重役(裁量権を持っている人間)に口利きをするので、ブロードウェイでは、「そういう投資家を引っ張ってくる為に、どういう立ち振る舞いをするべきか(どういうチーム編成にするか?)」という議論が今日もおこなわれています。
当然、一般の方が権利を分散して持っている(すでにアチコチでグッズも出ているし、今後も出続ける)作品に、ブロードウェイの投資家はお金を出しません。
映画にしてもそう。
海外の配給会社は「独占権」を買っているので。
僕が絵本『えんとつ町のプペル』の二次創作をフリーにしたのに、映画『えんとつ町のプペル』の二次創作(商用利用)をフリーにしていない理由は、まさにそれです。
世界のエンタメシーンは既得権益だらけで、びっくりするぐらい村社会だということを知って、打ち手を選んだ方がいい。
「Web3なんだから、二次創作を自由にさせろ〜!」は結構ですが、それをした瞬間に叶わない夢が発生します。
いろんなやり方があってイイと思うのですが、僕的に一番面白いなぁと思っているのは…
ウチの母ちゃんでも知っている世界的なIPを作り上げて(メジャーシーンで活躍させて)、「そのIPを生み出したコミュニティー」という感じで、コミュニティーのブランド価値を上げて、「そのコミュニティーが次に仕掛けるプロジェクトは何だ?」という感じで注目を集め、そこでマネタイズした方が、取り分が大きいと思います。
チムニータウンDAOだと、今、「CHIMNEY TOWN Landscape」でそれがやれていると思うのですが、やっぱり、あれ(「AIで描いた絵が売れる」という現象)は『えんとつ町のプペル』という(結構誰でも知っている)IPの信用(人気?)が根元にある。
費やしたコストの回収なんて一番最後でよくて、米アカデミー賞をとって、ハイブランドとコラボなんかをした後に、「あれは僕らが仕掛けましてん。ちなみに、次に僕らが仕掛けるのは…」が一番取り分がデカい。
くれぐれも『分散型』を否定しているわけではありません。
世界のエンタメ村のエグいルールをキチンと学んで、絶好のタイミングで分散することをオススメします。
現場からは以上でーす。
【追伸】
「https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。
宜しくお願いいたします。
※『Halloween Poupelle』の二次販売はこちら↓